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2010年6月10日 (木)

都市アーカイブの可能性

季刊まちづくりの24、25、27号に「都市アーカイブの可能性」と題した連載を3回にわたって書きました。6月1日に出た27号で完結ということになります。
これは、数年前から進めている「都市空間の定点観測」のプロジェクトとして進めたものです。
「都市アーカイブの技術」という言葉は、「都市の把握、理解、分析、記録、表現、共有の技術」を指します。定点観測のプロジェクトを進めていて、気になってきた周辺技術をまとめて「都市アーカイブの技術」とよび、今回の連載ではその最新技術をレビューしました。
初回は都市空間の定点観測を紹介し(画像を参考下さい)、第2回は「都市空間の再現の技術」として布施孝志さん(国土技術政策総合研究所)の「江戸の都市景観の再現」などの取り組みを紹介し、第3回は「都市空間の記録技術」として羽藤英二先生(東京大学)の「プローブパーソン技術」などの取り組みと、「都市空間の表現技術」として加藤文俊先生(慶応義塾大学)の「キャンプ」や、渡邉英徳先生(首都大学東京)の「デジタル地球儀と仮想世界を用いたアート&エンターテインメント」などの取り組みを取り上げました。

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これは、都市空間の定点観測研究会で進めている公開研究会と連動した企画になっていて、お話を聞いては、そこから考え、記事をつくる、というプロセスで連載を進めました。
公開研究会はもう少し続けようと考えていますので、機会があればまたどこかで原稿も書いてみようと思っています。

以下は、初回の連載に書いた、「都市アーカイブ技術」の定義にあたる部分の抜粋です。

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■都市を知る、記録する意味
 「まちづくり」とは都市を市民が共同で制御=ガバナンスすることである。制御するには都市を知らなくてはならない。都市のどこに何があるのか、街角でなにが起きているのか、都市の中でどのような変化が起きているのか、その変化にどのような可能性があるのか。都市の多くを知ることからまちづくりはスタートする。
 しかし、私たちは自分の暮らす都市の全体を知らない。都市は多数に所有される空間であり、その変化は多様である。一人の人間で把握できないほどその面積は広く、一人の人間が把握できないほど多くの人が暮らす。変化は同時に起き、人々のライフスタイルや行動パターンも多様化の一途を辿る。都市の全体を完全に知ることはそもそも不可能である。
 しかしそれでも私たちは都市の全体を知りたい。都市の全体を知ることに少しでも近づくにはどうしたらいいか。例えば都市の中に変わらない空間があれば、都市の全体を知る手がかりになる。都市中心部の歴史的市街地が保存されていれば、中心部に対する共通した感覚をベースに、郊外は中心部との対比の関係でイメージされる。都市の全体像を知る事は不可能なので、共通の感覚をベースに、都市の全体像を類推することになる。しかし、空間も行動様式も圧倒的なスピードで変容し続けている我が国の都市空間においては、こういった都市に対する人々の共通感覚がどんどん衰退していっているのではないだろうか。
 こうした感覚を形成する手がかりを得るために、「まちづくり」の中で「まちあるき」を行ったことがある人が多いだろう。都市の空間に何があるか、何が起こっているかを、複数の市民の複数の視線で共同で眺めてみるのが「まちあるき」である。そしてそこで発見した様々なこと、道路と住宅の関係、道路と緑地の関係、ちょっとした都市空間のしつらえ、心地よい緑地、街路で遊ぶ子供たち、忘れられ埃を被った昭和初期の住宅、などをベースに共通の感覚を紡ぎだし、その感覚がその後の「まちづくり」の手がかりとなっていく。
 しかし、「まちあるき」で見ることができるのは、都市空間のわずかな一断面でしかない。歩いたコースのもう一つ向こうの路地では何が起きているのだろうか、昼間と夜間では都市の使われ方はどう違うのだろうか、空地には1年前に何が建っていたのだろうか、5年前は、10年前は、と「都市を知りたい」という欲望にはきりがない。
 こうした欲望に応えるため、様々な技術が開発されてきた。都市の把握、理解、分析、記録、表現、共有の技術である。これらを総称して「都市アーカイブの技術」と呼ぶことにしよう。
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