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2015年11月

2015年11月10日 (火)

空き家の政策化についてのメモ

空家の特措法が出来て、色々な自治体で空き家に関する政策が組み立てられつつあるようです。
饗庭もたまたまある自治体の「空き家協議会」の委員となって、先日にその第1回目が開かれたところです。これから、あちこちの自治体でいろいろ試行錯誤しながらやっていくのだと思いますが、1回目の会議を終えて、いくつか「こういうことが見落とされがちなのかな?」というものが見えてきましたので、メモにしておきます。限られた経験からのほぼ思いつきに近い発想ですから、法の解釈も含めて間違えているかもしれませんし、特殊解なのかもしれません。いろいろご意見をお聞かせいただければと思います。
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1.特措法をうけて何がなされようとしているのか?
 空き家対策は、地方自治体やNPOなどの独自の取り組みが先行し、それらが法制化されたものと言えます。2004年に出来た景観法と同じ出来方ですね。逆に言えば、具体的な方策は先行する取り組みの中ですでに見えているものが多いので、それを組みあわせた政策がつくられていくのだと思います。
 検討されている政策の組み立てを見ると、①空き家の実態調査をすること、②そこから存在するだけで迷惑な空き家を抽出すること、③②については勧告や除去をすること、④それ以外の空き家については、空き家バンクなどをつくったりしてうまく流通するようにすること、あたりが一般的な組み立てではないかと思います。②③は公の取り組みとしてやることですが、④は民業圧迫みたいなこともあり、基本的には公は情報だけを流通させ、あとは民間市場で解いてもらおう、ということが一般的なのだと思います。「空き家は公の責任でどんどん撤去すべきだ」「空き家のリノベーションに補助金をいれろ」みたいな意見も一部ではありそうですが、まあ、問題の程度にもよりますが、そこまでして公が税金を使ってやるような課題ではないと饗庭は思っています。このあたりの公と民のせめぎ合いは、それなりに地域性が出てきそうですから、きちんと見極めたいところではあります。
 こういった、饗庭のスタンスを踏まえつつ、自治体の政策を組み立てる際に、こういうことを検討しておくといいんじゃないかな、ということを二つ思いついたので、挙げておきます。
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2.住宅市場の体調管理データをとることが大事
 今回の機会に、初めて空き家の実態調査をする自治体が多いと思います。ここで気をつけておきたいのは、調査の目的、ひいては空き家政策の目的をはき違えないでおきたい、ということ。多くの自治体で、この調査は「「存在するだけで迷惑な空き家」を同定することが目的」というふうに考えられているところが多いのではないかと思います。もちろん、それは重要なことではありますが、政策の本質的な目的は、「存在するだけで迷惑な空き家」を撤去する事ではなく、空き家も含めた住宅市場がうまくまわっている状態をつくり出す、ということにあるのではないかと思います。とりあえずの「存在するだけで迷惑な空き家」に対する対症療法は行なうとして、治療が終わったら中長期的に体質改善をしましょうね、ということではないでしょうか。
 ですから、空き家調査の本質は「10年に一度の人間ドック」ではなく、「毎日の体温をはかること」に近いのではないかと思います。「ウチの町の不動産マーケットは風邪を引いていないかな?」という感じです。
 そのためには、体温計みたいに、なるべく簡単に、気軽に自治体の不動産の状態をはかることが出来る手法を開発するとよいと思います。ダウ平均株価みたいに、代表値をつくれる不動産グループを定義してもよいし、徹底的に観察する地区を定めておいて、そこは毎年全数調査をするということもよいでしょう。
 今回行なわれる空き家調査は、行政の持っている個人情報(たとえば課税台帳と水道の契約データ等)を突合することもやられそうです。それはすなわち、いわゆる「パネル調査」が可能になるわけですから、継続的に同じ調査を続けていくことで、空き家だったものが空き家じゃなくなった理由とか、住宅の状態がどう遷移するのかもきちんと見る事ができます。「存在するだけで迷惑な空き家」をあぶり出す事が主目的ではなく、必要なのは「ちょっとした空き家がどう市場に戻っていくのか」という自己回復の知恵を、自治体の内部に蓄積していくことですので、1回限りではなく、2年に一度くらいはやるつもりで、調査を組み立てておくとよいと思います。
 少し前に、とある災害情報の研究者と話をしていたときに、インターネットに溢れている不動産情報をロボットをつかって集めることによって、その町に、何月頃に空き家が増えて、いつ減るか、ということが正確に分かる、ということを聞いた事がありますので、そういった手法を導入してもよいのかな、と思います。
 なお、体調管理のデータをとるのと並行して、自治体の職員の人にはなるべく地域を歩いて物件を見て欲しいです。「これくらいの町にこういうふうに空き家が増えてくる」というような「勘」を養う事が大事だと思います。
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饗庭がお手伝いしている鶴岡でかつて行なった空き家の調査の結果。スポンジ状に空き家が発生している事がわかります。
(これは本文とは直接関係ないイメージ画像っす)
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3.公共空間・インフラを作る方法を整理する必要がある
 饗庭が入っているある自治体の「空き家協議会」には「住宅ストック」という言葉がついています。ストックは「財産」という意味で、これはとても大事な視点です。「存在するだけで迷惑な空き家」はそれほどの数はないと思われますが、逆に言えば、それ以外の空き家は全てストックとして捉えられます。大抵の場合は、そのストックを民間市場に再流通させる事を目指して、空き家バンク等がつくられるわけですが、それだけだと不足ではないかと思います。
 わが国では、人口が増え、都市が成長する時に、住宅市場が成長したわけですが、その時に公共は公的住宅をつくって技術開発をしつつ、道路や公園等の公共空間・インフラをつくって、市場をサポートしました。これから先も同じで、ある程度のインフラをつくっていかないと、民間市場はうまく育たないでしょう。だけれども、人口減少で税収が減るわ、過去につくり過ぎたインフラの維持管理コストは嵩むわ、で、新しいインフラをつくる事には二の足を踏んでしまう状況もあるかと思います。ですので、初期のお金があまりかからず、かつ維持管理のコストがかからないインフラを絞り込んでつくらないといけないのですが、その時に「空き家」をうまくつかう、ということは考えておくべきでしょう。例えば、空き家を転用して福祉施設にするとか、空き家を安価で借り上げて公営住宅にする、ということです。
 それは、いずれは確実に自治体で取り組むべきことになってくると思いますので、空き家の政策を組み立てる時には、空き家等を借り上げて公営住宅等の公的な建物にする方法、基準、手続き、さらには、空き家等の寄付を受けて、公営住宅等の公的な建物にする方法、基準、手続きを整理しておくとよいと考えています。
 前者(借り上げ)は、特に関東や東北の自治体においては、東日本大震災の時に、特例的にやってしまったことでありますが、特殊解、特例としてではなく、一般的な方法としてきちんと整理しておく事が出来るとよいと思います。
 後者(寄付)は、どこの自治体でも多寡あれども、日常的に起きている事だと思います。「この家を誰も使わないので自治体に寄付をする」というような申し出で、大きなお屋敷が寄付されたりすると、そこに公園がオープンしたりしますよね。しかし、このことが自治体の中で情報共有されていないことが多いので、寄付はどういうタイミングで起きるのか、とか、これからの人口減少社会で大量の寄付の申し出があったときに、どう捌くのか、というあたりを整理しておくとよいと思います。
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鶴岡でつくった「空き家活用まちづくり計画」では、空き家を公共空間・インフラにするメニューが整理されました。
(これは本文とは直接関係ないイメージ画像っす)
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 とりあえず、上記2点ほどではありますが、この委員会はしばらく続くそうなので、また思いついた事があればブログに書いておきたいと思います。

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