« まちづくり市民活動の読み方 | トップページ | 津波で流されたところの景観を復元するプロジェクト(中間報告) »

2017年6月10日 (土)

中国でまちづくり!

1ヶ月前のことですが、中国の成都で市民向けのワークショップを開催してきました。
3月に南京で出会ったNGOのリーダーからの依頼で、彼らが成都で開いている社区のリーダー向けの連続研修会のうちの2日間を使って、日本のまちづくりのレクチャーをしたあとに、ワークショップを体験し、さらに自分たちのワークショップを設計してみよう、という体験型講座のコーティネートです。
.
Dsc_3734
たぶんパンダ以上に珍しい日本のまちづくりのレクチャー
-
中国でなぜ「まちづくり」=社区営造が流行しているのか、正確には流れを理解していないのですが、どうもここ5年くらいの流行のようです。
大きくは、鄧小平の改革開放路線の中で、毛沢東時代の「単位」という、融通の効かない近隣住区のような理論(?)で作られた都市空間が、融通が効くものにあらためられ、ここ20年くらいの間に市場化が進み、民間のデベロッパーがそれを再開発したりするようになってきています。「社区営造」はその中で、「単位」の流れを組むガバナンスの仕組み(居民委員会というものがあります)を補完するものとして期待をされているようです。
具体的な担い手は「社会組織」とよばれる、NGOやNPOにあたる人たち。彼らは地域社会が大事、という原理は崩さず、組織としては地域を飛び回ってあちこちの社区に入り込んでいます。これまで南京、上海、成都の現場をざっと見てみたのですが、都市によってその導入の仕方が違うようでもあります。また社区営造の先輩である台湾(90年代中頃からスタート)の人的な影響も随分と受けているようです。
成都では20代そこそこの若いリーダーの人たちにも会ったのですが、彼らははっきりと「2008年の四川大地震が人生を変えた」と語っており、災害で社会の中の助け合いのようなものが顕在化したことも影響があるとのこと。この辺の状況は、あと1年くらいかけて研究室でも調べたいと考えています。
.
Dsc_3561
会場の社区はこんな感じ。いくつかの集合住宅群がまとまった社区です
-
饗庭に声をかけてくれたNGOのリーダーは、呉楠先生という方。南京で設計事務所を主宰する建築家なのですが、まずは自分の住む社区の住民としてテニスのサークルをつくり、そこからどんどん社区のマネジメントの方に活動を展開させ、それを専業とするNGOをつくり、そのNGOがあちこちの社区営造の仕事を受けるようになった、とのことです。
成都で現場を仕切っていたお姉さんは、学生の時にインターンでNGOに入り、そのまま就職したそうです。設立されてから数年で、走りながら事業を組み立てているような、本当に若い組織でした。
.
Dsc_3674
社区の車庫の上に作ったコミュニティーガーデンを説明してくれたNGOのスタッフ
-
成都には初めて行ったのですが、沿岸部の都市にくらべると落ち着いているそうで、人口の流出も少ないそう、少しゆっくりした時間の流れを感じました。中心部にある人民公園はすごいことになっており、あらゆる場所が、市民の余暇やサークル活動やおしゃべりに使われていました。ここに限らず、中国の人たちはパブリックスペースを使うのが本当に上手というか、遺伝子に染みついているような感じでした。
.
Dsc_3626
合唱のサークルが公園で練習をしていました
-
さて肝心のワークショップですが、饗庭の研究室でいつも使っている「みんなでまちづくり」というワークショップの内容を微調整して翻訳したものを持参しました。96人の参加者で、8人×12グループという、日本でもなかなかない規模のワークショップ。ニーハオも満足にしゃべれない私に替わって、饗庭研の中国女子二人(金静さんと呉君さん)にびしばしと会場を仕切ってもらいました。
1日目の午前は日本のまちづくりについてのレクチャー、様々なワークショップ手法についてのレクチャーをし、その後に「みんなでまちづくり」をテーブルごとに試用します。
「みんなでまちづくり」は、地図を机に広げ、参加者がある役割になりきった上で、「まちをこのようにしたい」とビジョンを発表し、他の参加者が手持ちのツールカードを使ってそのビジョンの実現手段を提案し、最後に全員で一番いい提案を選ぶ、というシンプルな構造を持ったゲームです。
それを一通り体験したあとに、グループごとに会場周辺の社区に散って、「まちの課題」と「まちづくりに使えるかもしれないツール」を調査し、それを会場に持ち帰って、2日目の午前中にかけてそれぞれのグループごとにオリジナルの「みんなでまちづくり」を作ります。
そして最後にお互いにオリジナルの「みんなでまちづくり」を試しあう、ということで一連のワークショップが終了です。
わたくしはニーハオくらいしか言えないので、1日目の午後からは、何を議論しているのかわからなかったのですが、終わった後の笑顔を見るに、おそらくは成功裏に終了したものと思います。
.
_20170516193617
参加者はみな若く熱気がありました
-
「みんなでまちづくり」は、私が早稲田にいた時に勉強していた「まちづくりデザインゲーム」を、私が学生たちと発展させたものですが、今回中国に持っていくにあたって、「そもそも果たして通用するのだろうか」という懸念がありました。
「まちづくりデザインゲーム」の方法は、この書籍にまとめてはあるのですが、ごく簡単に述べると、参加者がまず「目標」を選び、「生活シーンカード」とよばれるもので将来の生活イメージを組み立てた上で、その二つを根拠にして提案を作っていく、というものです。私の「みんなでまちづくり」では、「目標」と「生活シーン」を言葉ではなく絵的なイメージで選ぶようになっており、それを根拠に提案をつくっていきます。いずれも市民参加の場で初めて出会う人たち、あるいは日常的に顔をあわせていてなんだか議論が煮詰まってしまった人たちに対して、「目標」を仮置きして、それを手掛かりにして集団を結びつける、という方法ですね。
懸念は、この「目標」という概念が、そもそも中国の人にどう受け止められるかわからない、ということでした。私が乏しい情報で想像するに、毛沢東の時代は「単位」とされた共同体ごとにかなり具体的な「目標」が決められていたはずで、つまりは「目標」は社会を統制する厳しく融通の聞かない言葉として機能をしていたはず。とても固い言葉として受け止められたらどうしよう、ということが懸念の一つ目。一方で、「目標」なるものを立てずとも、機能する議論の場もあります。私が日本国内で取り組んでいる現場でも、そんな持ってまわったことをしなくても議論がさくさく回る場があります。「目標」が不要な社会だったらどうしよう、ということが懸念の二つ目でした。
.
Dsc_3762
ワークショップの様子
-
結論から言いますと、参加者の反応だけを見るに(繰り返しますが、何を言っているのかはわからないのですが)、どちらの懸念も杞憂だったなあ、ということです。成都に限ったことなのかもしれませんが、ワークショップのやり方はスムーズに受け入れられました。もちろん微細なところでの微調整は、こちらではわからないので、終わった後のアンケートを分析しているところです。
また、とても面白かったのは、このワークショップは一番いい提案をした人にコインが渡る、というゲーム形式をとっているのですが、これは参加者に大受けでした。早く終わったグループが、カードをつかって新しいゲームを開発するほどに。成都の人たちは街角で麻雀やらトランプやらのゲームをしているのですが、ゲーム好き国民・・ということなのかもしれません。
.
Dsc_3878
新しいゲームを始めてしまった人たち
-
成都は連日30度超え、1年分の山椒とパクチーと唐辛子を採った1週間でした。ちなみにわたくし、非常に四川料理が体にあうらしく、出されたものは全て食べつくしました。辛さというよりは量で胃が疲れてしまいました。
.
Dsc_3820
火鍋、めちゃくちゃ美味しい

|

« まちづくり市民活動の読み方 | トップページ | 津波で流されたところの景観を復元するプロジェクト(中間報告) »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/154646/65392845

この記事へのトラックバック一覧です: 中国でまちづくり!:

« まちづくり市民活動の読み方 | トップページ | 津波で流されたところの景観を復元するプロジェクト(中間報告) »